サラバ! 

西加奈子はすごい。人間の心情を、どこまで正確に捉えることができれば、あんな文章がかけるのか。歩も、貴子も、お母さんもお父さんも、矢田のばあちゃんも、夏枝おばさんも、須玖も、鴻上も、ヤコブも。一人一人の心情に、同情できて、リアル。この人の、この心の変化には、納得出来ないわ、っていうのが1つもなかった。

 

登場人物の設定は、幾分ぶっとんだものも多いけど、だからこそ迫るものがある。

 

歩が、もっと自分の気持に素直になれたら、世界はもっと変わっていた。家族に対して、もっと働きかけて、互いをぶつけあう時間が必要なんだ。きちんと対話する時間が必要なんだということ。周りの了解を得ずに、勝手に話を進めると、ろくなことがない。後々に禍根を残すことになるだけだ。ずっと感情と理性のパイプとなるものがなかった。それこそが、作中の「芯」なのだろう。芯になりうる考え方を持っているはずなのに、それを貫き通せるほど強くない。ぼくは芯を持っていたいと思う。